私の転職ブラックヒストリー

部門間の縄張り争いが招いた、入社後の連携失敗とマネジメントの苦悩

Tags: 部門間連携, 組織文化, マネジメント, 失敗談, 入社後ギャップ, 人間関係

はじめに:部門間の壁に阻まれたマネジメント経験

新しい環境で自身の経験を活かし、大きなプロジェクトを推進したいという期待を胸に入社しました。しかし、現実は想像以上に厳しく、特に部門間の「縄張り争い」とも言える非協力的な文化に直面し、計画していた連携が全く進まず、結果としてプロジェクトは頓挫寸前となりました。これは、私にとってマネージャーとして大きな失敗経験の一つです。

この記事では、私がどのように部門間の壁に阻まれ、連携構築に失敗したのか、その具体的な経緯と原因、そしてそこから得られた教訓を赤裸々にお話しします。もしあなたが今後、部門横断的なプロジェクトに関わる可能性があるならば、私の失敗談を反面教師として、同様の苦労を避けるための一助としていただければ幸いです。特に、組織の内部事情や人間関係に関心のあるマネージャー層の皆様には、具体的な失敗事例として参考にしていただける部分があるかと存じます。

失敗の詳細:非協力的な部門との連携

私が着任したのは、特定の事業領域を立て直すというミッションを担うマネージャー職でした。そのミッション達成のためには、複数の既存部門(営業、開発、マーケティング、サポートなど)から協力を得て、部門横断的な新しい取り組みを推進することが不可欠でした。入社時の面談でも、この「部門間の連携強化」が私の重要な役割の一つとして期待されていることを確認していました。

意気揚々とプロジェクトを開始し、関係各部門への協力を依頼するべく働きかけを始めました。まずは、状況説明と協力を仰ぐための合同会議を提案しました。しかし、これが最初のつまずきでした。会議への参加者は少なく、参加しても消極的な姿勢が目立ちました。特に顕著だったのは、ある部門が別の部門が出した情報に対して「それは我々の管轄ではない」「そのやり方ではうまくいかない」といった否定的な反応を示すことでした。

具体的な例を挙げます。新しい顧客獲得のための連携キャンペーンを企画し、営業部門にはリード情報の共有を、マーケティング部門にはプロモーション施策の協力を依頼しました。しかし、営業部門からは「その情報は我々の顧客資産であり、安易に共有できない」、マーケティング部門からは「予算が既に決まっており、新しい施策に回す余裕はない」といった理由で、話が進みませんでした。さらに、互いの部門のやり方や文化に対する強い不信感が根底にあるように感じられ、建設的な議論が非常に困難でした。

私は、個別に面談を設定したり、プロジェクトの目的を繰り返し丁寧に説明したり、共通の利益を強調したりと、様々なアプローチを試みました。しかし、長年培われてきた部門間の壁、具体的には、過去の成功体験や利害関係の対立、評価制度の違い、そして何よりも「自分たちの領域を守る」という意識が非常に強く、私の働きかけはことごとく跳ね返されました。一部のキーパーソンは協力的な姿勢を見せてくれましたが、組織全体としての協力体制を築くことはできませんでした。結果として、必要な情報が集まらず、プロモーションも実施できず、プロジェクトは立ち上げ段階から大幅な遅延が発生し、最終的には当初想定していた成果を全く上げることができませんでした。

原因分析:なぜ部門間の壁は厚かったのか

この失敗の背景には、複数の要因が複雑に絡み合っていたと分析しています。

第一に、組織文化と歴史的経緯です。その会社は歴史が長く、各部門がそれぞれ独立性の高い組織として運営されてきた経緯がありました。評価制度も部門ごとに最適化されており、部門間の連携や協力が評価されにくい構造になっていました。結果として、部門間の成果を最大化するよりも、自部門の成果を最大化することに意識が向きがちでした。これは、入社前の情報収集では表面的な部分しか把握できておらず、組織の根深い文化や歴史を理解できていなかった私の準備不足でもあります。

第二に、トップマネジメントの姿勢です。部門間の連携の重要性は認識されていたものの、具体的な推進策や、連携を阻む構造的な問題への介入は十分ではありませんでした。各部門の自律性を重んじるあまり、部門間の調整は現場任せになっており、強力なリーダーシップによる牽引が不足していたと言えます。

第三に、私自身のマネジメントの限界です。新しい会社で信頼関係が十分に構築できていない段階で、比較的大きな改革を伴うプロジェクトを推進しようとしたこと。関係者との個別コミュニケーションや根回しは試みましたが、十分な時間をかけられず、深いレベルでの相互理解や信頼関係を築くに至りませんでした。また、部門間の対立の根源にある利害関係や感情的な側面への配慮が不足していたかもしれません。技術的な合理性だけでは、人間関係や組織の壁は崩せないことを痛感しました。

面接時には、部門間の連携が課題であることは示唆されていましたが、「あなたのリーダーシップで改善してほしい」という期待として語られていました。しかし、その課題の根深さや、既存の組織構造・文化が連携をどれほど困難にしているかという点は、十分に伝えられていなかったと感じています。

そこから得られた教訓:部門間の壁を乗り越えるために

この苦い経験から、反面教師として学ぶべき点は多くあります。

最も重要な教訓の一つは、組織の「見えない壁」や文化は、事前の情報収集だけでは見抜くのが難しい場合があるということです。特に、部門間の関係性、非公式なルール、過去の対立の歴史などは、内部に入り込まなければ分からないことが多いです。しかし、だからこそ、入社前に可能な範囲で多様な情報源(社員へのOB/OG訪問、転職エージェントからの情報、SNSでの評判など)から、ネガティブな側面も含めたリアルな組織の姿を探ろうと努力することが重要です。そして、入社面接の場で、抽象的な課題だけでなく、その課題の具体的な現れ方や、会社としてどのような対策を講じているのか、現場レベルでは何が問題になっているのかなどを、遠慮せずに踏み込んで質問することも必要だと学びました。

次に、入社後の初期における人間関係構築の重要性です。特に部門横断的な役割を担う場合、テクニカルなスキルや論理的な正しさだけでは人は動きません。各部門のキーパーソンと早期に個人的な信頼関係を築き、「この人のためなら協力しよう」と思ってもらえる関係性を地道に構築することが、後々の連携において非常に重要となります。これは、単なる挨拶や会議でのやり取りだけでなく、非公式な場でのコミュニケーションや、相手の立場や課題への深い理解を示す姿勢が求められます。

また、構造的な問題への対処です。私の失敗は、個人の努力だけでは超えられない組織構造や文化に原因の一端がありました。部門間の連携が評価されない制度や、トップの関与不足といった構造的な問題がある場合、個人の力には限界があります。このような状況に直面した際は、自身のマネジメントスタイルを改善するだけでなく、必要に応じて上層部への働きかけや、組織全体を変えるための提言を行う勇気も必要です。そして、もしそれが極めて困難であると判断した場合には、自身のキャリアパスを再検討するという決断も視野に入れるべきかもしれません。

最後に、「期待値調整」の重要性です。入社時に会社が持つ期待と、実際に可能なこと、そして自身のスキルや権限で実現できることの間には、しばしばギャップがあります。このギャップを早期に認識し、会社側と現実的な目標や役割について対話を重ね、期待値を適切に調整していく作業は、無用な失敗やフラストレーションを防ぐために不可欠です。

結論:見えない壁の存在を前提としたアプローチを

私の「部門間の縄張り争い」による連携失敗は、組織には目に見えない壁や根深い文化が存在し、それが業務遂行やマネジメントに大きな影響を与えることを痛感させられた経験でした。転職活動や入社後には、表面的な情報だけでなく、組織の構造、文化、そして人間関係といった側面にも深く目を向ける必要があります。

特にマネージャーとして、部門横断的なミッションを担う際には、部門間の連携を阻む可能性のある要因を事前に可能な限り探り、入社後は関係者との丁寧な関係構築に時間をかけ、構造的な問題には適切なアプローチを検討することの重要性を、この失敗から学びました。

組織の壁は必ずしも悪意から生まれるものではなく、歴史や構造に根差していることがほとんどです。その存在を前提とした上で、どのように戦略的に、そして人間的に関わっていくかが、マネージャーとしての腕の見せ所であり、同時に大きな失敗のリスク要因ともなり得ます。私の失敗談が、これから新たな環境でチャレンジされる皆様にとって、少しでもお役に立てば幸いです。