入社後に直面した、部門間の非協力的な文化とマネジメントの苦悩
入社後に気づいた、部門間の見えない壁
新しい会社にマネージャー職として入社した時のことです。面接時や入社前に説明を受けた際には、全社一丸となって目標達成を目指す、という前向きな言葉を聞いていました。しかし、実際に働き始めると、そこには私が想像していたものとは全く異なる現実がありました。それは、各部門が完全に縦割りで、お互いにほとんど協力し合わないという、根深い非協力的な文化でした。この部門間の見えない壁に直面し、私はマネージャーとして大きな苦悩を抱えることになったのです。
プロジェクトは停滞し、マネージャーは板挟みに
私の部署は、他部門との連携なくしては成り立たない業務を担っていました。例えば、ある顧客向けの新しいサービス開発プロジェクトでは、企画部門、開発部門、営業部門、そして私の属する運用部門が密接に連携する必要がありました。しかし、蓋を開けてみると、情報共有は滞り、他部門からの協力依頼は後回しにされるのが常でした。
企画部門は開発や運用の現場を知らずに理想論を押し付け、開発部門は自部門の都合を最優先し、営業部門は顧客からの無理な要求をそのまま持ち込んでくる。そして、どの部門も「自分たちの責任範囲はここまで」と線を引きたがり、その間の連携部分は宙に浮いてしまうのです。
私はマネージャーとして、これらの部門間の調整役を担おうとしました。しかし、部門の壁は厚く、正規の会議体だけでなく、個別に根回しや交渉を試みても、相手部門のマネージャーやメンバーからは「それはうちの仕事ではない」「リソースがない」「なぜうちがそこまでやる必要があるのか」といった返答ばかりで、前に進めることが非常に困難でした。
自分のチームのメンバーからも、「他部門が協力してくれないせいで、自分たちの業務が進まない」という不満が頻繁に出るようになり、私は文字通り板挟みの状態でした。部下を守り、プロジェクトを推進するためには他部門との連携が不可欠なのに、その肝心な部分が全く機能しないのです。
なぜ部門間の連携が機能しなかったのか?
この状況を深く分析してみると、いくつかの構造的な問題と文化的な要因が見えてきました。
まず、組織構造そのものが極端な縦割りでした。各部門が完全に独立採算制に近い形で運営されており、全社目標よりも部門目標の達成が強く求められる評価制度になっていました。そのため、他部門を協力して成功させるよりも、自部門のリソースを自部門のために使うインセンティブの方が圧倒的に強かったのです。
また、過去の失敗や部門間の対立が尾を引き、相互不信感が根付いているようでした。過去のプロジェクトでうまくいかなかった際に、他部門に責任を押し付け合ったというような話も耳にしました。そうした経緯から、「他部門とは深く関わらない方が無難だ」という空気が醸成されていました。
さらに、経営層からの明確なリーダーシップや、部門横断的な目標設定、あるいは部門間の連携を促進するための仕組みが決定的に不足していました。経営層は各部門の報告を聞くだけで、部門間の調整や共通認識の醸成には積極的に関与しない姿勢が見受けられました。結果として、部門間はサイロ化し、協力よりも競争、あるいは無関心がデフォルトの状態になってしまっていたのです。
私自身も、入社前に組織文化や部門間の関係性について深く掘り下げて質問しなかったこと、そして入社後に状況を改善するために、より抜本的な手段(例:経営層への問題提起と改善提案、部門横断プロジェクトの発足提案など)を強く働きかけるべきだったという反省があります。目先の調整に終始してしまい、根本原因へのアプローチが遅れたことは否めません。
この失敗から得られた「反面教師」としての教訓
この苦い経験から学んだ最も重要な教訓は、「組織文化、特に部門間の連携状況は、事業内容や個別の職務内容と同じくらい、あるいはそれ以上に、入社後の働きやすさや成果に影響する」ということです。そして、この文化は面接だけでは見えにくいということです。
これを反面教師とするならば、次の転職活動では、以下の点をより深く確認する必要があると痛感しています。
- 組織構造と評価制度: 縦割りか、部門横断的な連携が評価される仕組みか。評価制度が全社最適と部門最適のどちらを強く志向しているか。
- 部門間のコミュニケーションの実態: 実際の業務において、他部門との連携はどの程度発生するか。情報共有の方法や頻度は適切か。特定のプロジェクトや業務について、異なる部門がどのように連携しているかの具体的な例を聞いてみる。
- 経営層の関与とリーダーシップ: 経営層は部門間の調整や全社的な連携について、どのような姿勢を示しているか。部門間の対立や非協力的な状況に対し、過去にどのように対応したか。
- 入社後の行動: もし入社後に部門間の壁に直面した場合、マネージャーとして諦めずに、積極的に関係構築に努めること。必要であれば、状況を正確に把握・分析し、経営層に対して組織構造や評価制度、文化の改善を提言する勇気を持つこと。自身のチーム内では、他部門への一方的な批判に陥らず、建設的な連携のあり方について議論し、まずは自部門から協力姿勢を示すこと。
結論:見えない組織の壁は、マネージャーの成果を阻害する
入社後に直面した部門間の非協力的な文化は、私のマネージャーとしての能力を試されるだけでなく、文字通り成果を出す上での致命的な障壁となりました。どんなに優秀な個人やチームでも、組織全体として連携が機能しなければ、大きな成果を上げることは困難です。特に部門間の調整が不可欠なマネージャー職にとっては、こうした組織文化は深刻な問題となり得ます。
この経験を通じて、転職先を選ぶ際には、表面的な条件だけでなく、組織の「内部事情」、特に人間関係や組織文化の健全性を、可能な限り多様な方法(OB/OG訪問、口コミサイト、面接官への具体的な質問など)で確認することの重要性を改めて認識しました。そして、もし壁に直面しても、それを乗り越えるための努力と、必要なら環境を変えるための働きかけも、マネージャーの重要な役割であると学びました。この失敗談が、皆様がより良い転職先を見つけ、入社後に直面するかもしれない困難を乗り越えるための一助となれば幸いです。