入社後に直面した既存メンバーの強い反発と、チームビルディング失敗の痛恨体験
入社後に直面した既存メンバーの強い反発と、チームビルディング失敗の痛恨体験
私は以前、あるIT系企業にマネージャーとして中途入社した際、既存メンバーからの強い反発に遭い、チームビルディングに完全に失敗したという苦い経験があります。この体験は、私自身のマネジメント手法や、入社前の情報収集の甘さ、そして組織文化の重要性を痛感させられるものでした。今回は、この失敗談を率直に語り、読者の皆様にとって今後の転職活動や入社後のマネジメントにおける反面教師となれば幸いです。
失敗の詳細:なぜチームは機能不全に陥ったのか
私が着任したチームは、長く同じメンバーで構成されており、非常に属人性の高い業務を担っていました。前任のマネージャーは組織変更に伴い異動しており、約1ヶ月間、チームはマネージャー不在の状態でした。私は前職で培った経験を活かし、チームの生産性向上と新しい業務プロセスの導入を目指していました。
しかし、入社してすぐにメンバーからの目に見えない「壁」を感じ始めました。挨拶をしても返事が冷たい、会議で発言しても反応が薄い、重要な情報共有が私だけ遅れる、といった状況が続きました。私は早期に関係を構築しようと、積極的に1on1面談を設定したり、チームランチに誘ったりしましたが、メンバーはどこかよそよそしく、心を開いてくれているようには感じられませんでした。
特に決定的な出来事がいくつかありました。一つは、私が提案した新しい業務フローについて、会議では誰も異論を唱えなかったにもかかわらず、後からメンバー間で「やり方が変わって面倒だ」「これまでのやり方で問題なかったのに」といった不満が出ていることを他の部署の社員経由で知った時です。また、私が依頼した業務に関する進捗報告が意図的に遅延されたり、必要な情報が共有されず、業務が滞る事態も発生しましたのです。
これらの出来事により、私はチーム内で孤立し、チームをまとめるどころか、私自身がチームのボトルネックになっているかのような感覚に陥りました。メンバーとの信頼関係は全く構築できず、目標達成に向けた共通認識も持てないまま、チームは次第に機能不全に陥っていきました。
原因分析:何が失敗を招いたのか
このチームビルディング失敗の根本原因は複数存在すると分析しています。
第一に、企業側の問題です。会社は中途採用のマネージャーを受け入れる組織文化が醸成されていませんでした。既存メンバーに対する、新しいリーダーを迎える上での事前の丁寧な説明や、中途入社者がスムーズに溶け込めるようなサポートが不足していたと考えられます。また、長く固定化されたチームであるにも関わらず、そのチームの人間関係や文化に関する情報が事前に十分に共有されませんでした。
第二に、私自身の問題です。私は前職での成功体験に囚われすぎていました。新しい環境の組織文化や、長年そのチームで働いてきたメンバーの心情を深く理解しようとする努力が足りませんでした。性急に自分のやり方を導入しようとしすぎた結果、メンバーの抵抗感や不安を増幅させてしまった可能性があります。関係構築よりも、成果を出すことや効率化を優先してしまったという反省があります。メンバーの不安や懸念を十分に聞き出し、共感を表現するコミュニケーションが不足していたことも大きな要因です。
第三に、既存メンバー側の問題もあるかもしれません。変化への抵抗感や、新しい上司に対する警戒心、あるいは前任者やこれまでのやり方に対する愛着など、様々な感情があったと推測されます。しかし、それらの感情が非協力的な態度となって現れた背景には、やはり企業側の配慮不足や私自身のコミュニケーション不足が影響していたと考えられます。
結果として、企業文化の未成熟さ、私の経験不足と性急さ、そしてメンバーの不安や抵抗感が複合的に絡み合い、チームビルディングの失敗という形で表面化してしまったのです。
そこから得られた教訓(反面教師としての学び)
この痛恨の経験から、私は多くの重要な教訓を得ました。これらは、特に中途でマネージャーとしてチームを率いる際に、反面教師とすべき点であると考えています。
- 入社前の組織文化・人間関係に関する情報収集の徹底: 面接やカジュアル面談の機会を利用して、チーム構成、メンバーの勤続年数、前任者からの引き継ぎ状況、そして最も重要な「人の受け入れ方」「変化への対応」といった組織文化のリアルを可能な限り把握しようと努めるべきでした。企業が中途入社者をどのように既存組織にインテグレートしようとしているのか、その姿勢も確認することが重要です。
- 着任初期の「傾聴」と「理解」への注力: チームの課題解決や目標達成はもちろん重要ですが、中途マネージャーとして最も優先すべきは、チームメンバーとの信頼関係構築です。そのためには、まずメンバー一人ひとりの話に耳を傾け、彼らの経験、知識、懸念、そしてこれまでのチームの歴史を深く理解することから始めるべきでした。自分の考えを一方的に押し付けるのではなく、「私たちはこれから一緒に働く仲間であり、あなたの経験や意見を尊重します」という姿勢を丁寧に伝えることが不可欠です。
- 変化は徐々に、そして「共に」行う姿勢: 改革や新しいルールの導入は、メンバーの納得と協力を得ながら、段階的に進める必要があります。なぜ変化が必要なのか、それによって何を目指すのかを丁寧に説明し、メンバーからの意見や提案を積極的に取り入れ、「やらされる」のではなく「共に創る」という感覚を共有することが重要です。
- 上司や人事部門との連携: チーム内の人間関係に課題を感じたり、メンバーからの非協力的な態度が続く場合は、一人で抱え込まず、すぐに直属の上司や人事部門に相談すべきです。彼らは組織全体の状況を把握しており、解決に向けたサポートやアドバイスを得られる可能性があります。早期の相談が、問題の深刻化を防ぐ鍵となります。
結論:信頼構築こそマネージャーの最初の仕事
中途入社でマネージャーになるということは、既存の人間関係や文化の中に飛び込んでいくということです。そこには、歓迎ムードだけでなく、警戒心や抵抗感、過去からの慣習といった様々な要素が存在します。
私の失敗は、これらの要素を軽視し、自分の経験に基づいた理想論や性急な成果追求に走ってしまったことにあります。マネージャーとして最も困難であり、最も時間を要する仕事の一つは、チームメンバーとの信頼関係をゼロから、あるいはマイナスから構築することです。特に中途入社者は、まずメンバーに受け入れられ、信頼されるための土台作りを最優先で行う必要があります。
もし、これから中途でマネージャー職に就かれる方がいらっしゃれば、この私の失敗談をぜひ反面教師として、入社後はまずチームメンバーの「人」として理解し、尊重することに時間をかけてください。急がば回れ。信頼という見えない資産こそが、その後のチーム運営の成否を分ける最大の要因であると、私の痛恨の経験は教えてくれています。