私の転職ブラックヒストリー

入社後に直面した、機能しないオンボーディングと孤立するマネージャーの失敗談

Tags: オンボーディング, マネジメント, 転職失敗, 入社後ギャップ, 組織文化, 孤立

入社時のオンボーディング、それは立ち上がりを左右する生命線

転職において、新たな環境への適応は避けて通れない課題です。特にマネージャーとして入社する場合、個人のパフォーマンスだけでなく、チーム全体の成果に直結するため、早期の立ち上がりは極めて重要になります。その鍵を握るのが、会社が提供するオンボーディングプロセスです。

私は以前、ある成長企業にマネージャーとして転職した際、このオンボーディングが全く機能しておらず、結果として自身の立ち上がりに大きく遅れが生じ、チームマネジメントにも悪影響を及ぼすという失敗を経験いたしました。今回は、その具体的な失敗体験と、そこから得られた教訓を共有させていただきます。これはまさに、読者の皆様が同じ轍を踏まないための「反面教師」となるでしょう。

期待とはかけ離れた、放置された入社初日

期待と不安を胸に入社した初日、私は指定されたオフィスの一角に通されました。しかし、そこから数時間は誰からも具体的な指示がなく、ただPCに向かって静かに座っている状況でした。歓迎ムードも特になく、自身の席や使用するPC、メールアドレスに関する案内も曖昧でした。

事前に聞いていた「〇〇さん(仮名)があなたのオンボーディングを担当します」という話はあったものの、その〇〇さんは非常に多忙で、挨拶に来られたきり、ほとんど顔を合わせる機会がありませんでした。必要なシステムアカウントの発行も遅れ、社内ネットワークへの接続や、業務で必須となるツールの利用開始まで数日を要しました。社内ドキュメントも体系的に整理されておらず、どこに必要な情報があるのか皆目見当がつかない状況でした。

マネージャーとして、まずはチームメンバーの顔と名前、担当業務を把握し、関係性を築くことから始めたいと考えていました。しかし、組織図が不明瞭で、誰がどのチームに属しているのかもすぐに分かりませんでした。個別に声をかけようにも、皆さん忙しそうで話しかけにくい雰囲気があり、積極的に関わるきっかけを掴めずに時間だけが過ぎていきました。

自身の役割や期待値についても、面接時におおまかな説明はあったものの、入社後に具体的にどのような目標を、いつまでに達成すべきかといった詳細な擦り合わせは一切ありませんでした。誰に確認すれば明確な情報を得られるのかも分からず、手探りの状態が続きました。

このような状況が続いた結果、私は組織の中で孤立感を深めていきました。必要な情報が得られない、誰にも相談できない、そして自身のマネージャーとしての業務がなかなか開始できない焦燥感に苛まれました。チームメンバーとの信頼関係を築くどころか、彼らから見ても「この新しいマネージャーは何をしているのだろうか」と思われていたかもしれません。早期に解決すべき問題や、着手すべきプロジェクトは認識していましたが、情報やリソース、そして承認プロセスに関する知識が全くなく、具体的に行動を起こすことができませんでした。

なぜオンボーディングは機能しなかったのか、その原因分析

この失敗の主な原因は、会社側のオンボーディングに対する意識の低さと、受け入れ体制の不備にありました。

まず、会社として新規入社者がスムーズに立ち上がるための体系的なプログラムが存在しませんでした。特に私のようなミドル層の採用、かつマネージャー職という役割を担う人材に対して、どのような情報を提供し、誰がサポートし、どのようなマイルストーンを設定すべきか、という設計が全くできていなかったのです。

次に、受け入れ側の部署、特に私の直属の上司や同僚は、自身の日常業務に追われており、新規入社者のオンボーディングに時間を割く物理的・精神的な余裕がありませんでした。担当として指定された〇〇さんも、名目上だけで、具体的なサポートをする体制にはなっていませんでした。採用決定の部署と、実際の受け入れ部署間の連携も不足していた可能性が高いです。

また、組織文化として、キャッチアップは「個人の能力と努力に依存する」という暗黙の了解があったのかもしれません。能動的に情報を取りに行かない者は遅れをとる、という厳しい側面があったように感じます。しかし、前提となる情報へのアクセスが阻害されている状況では、個人の努力だけでは限界があります。

私自身の側にも反省点があります。入社前の段階で、オンボーディングプロセスについて、より具体的に、例えば「入社初日に誰と会えるのか」「どのようなシステムアカウントが発行されるのか」「メンターはつくのか」「最初の1週間のスケジュールは」といった点を詳細に確認すべきでした。また、入社後も、もっと積極的に周囲に働きかけ、自身の置かれた状況を正直に伝え、助けを求める努力をすべきでした。しかし、新しい環境で迷惑をかけたくない、という気持ちが強く、遠慮してしまった部分がありました。

この失敗から得られた、反面教師としての教訓

この苦い経験から、私は多くの教訓を得ることができました。今後の転職活動や、もし自分がマネージャーとして部下を迎える立場になった場合に活かせる重要な学びです。

第一に、入社前の段階で、具体的なオンボーディングプロセスについて徹底的に確認することの重要性です。面接時やオファー面談の際に、「入社後の最初の1ヶ月でどのようなサポートを受けられるか」「業務に必要なシステムアクセスや情報の共有体制はどのようになっているか」「不明点があった場合の相談先は明確か」といった点を具体的に質問すべきです。可能であれば、受け入れ部署の担当者と話す機会を設けてもらうよう依頼することも有効かもしれません。

第二に、入社後は受け身にならず、能動的に情報を取りに行く姿勢です。会社側の体制が不十分であっても、「待っていれば誰かが教えてくれるだろう」と考えていてはいけません。積極的に周囲に話しかけ、自身の現状を伝え、必要な情報や協力を依頼する必要があります。特にマネージャーは、自らのネットワークを早期に構築することが不可欠です。

第三に、早期に組織内のキーパーソンを見つける努力です。非公式な情報源や、部署間の調整役となる人物など、組織構造図には載らない重要な人物が必ず存在します。そうした人物と早期に関係を築くことが、必要な情報やリソースへのアクセスを円滑にするために非常に役立ちます。

第四に、期待値の明確化を自ら働きかけることです。会社側からの明確な指示がない場合でも、自身の役割と期待値を、上司や関係者と積極的にすり合わせる努力が必要です。「私はこのように理解していますが、合っていますか?」「最初の3ヶ月でどのような成果を期待されていますか?」といった問いかけを通じて、認識のズレを解消し、自身の行動指針を明確にしていきます。

これらの行動は、新しい環境での自身の孤立を防ぎ、スムーズな立ち上がりを可能にするだけでなく、会社側に対しても「この人は主体的に動ける人材だ」という印象を与え、信頼構築にも繋がります。

まとめ:オンボーディングは会社と個人の共同作業

私の失敗体験は、会社側のオンボーディング体制の不備が、入社者の立ち上がりを大きく遅らせ、個人のパフォーマンスやメンタルヘルスにまで影響を与えることを示しています。しかし同時に、入社する側も、自身のキャリアを守り、早期に貢献するために、能動的にオンボーディングに関与することの重要性を浮き彫りにしています。

もしあなたが現在、転職活動中であるなら、入社前の段階でオンボーディングプロセスについてしっかりと確認してください。そして、もしすでに転職し、私と同じように「機能しないオンボーディング」に直面しているなら、この記事で共有した教訓を参考に、能動的に状況を改善するための行動を起こしてみてください。あなたの次のキャリアが、私のような失敗体験で躓かないことを心から願っています。