入社後に直面した、上司との認識のズレと信頼関係構築の失敗
導入
転職活動において、新しい職務内容や組織の事業方向性については入念に情報収集を行うかと思います。しかし、入社後に自身のパフォーマンスや働きがいを大きく左右するのが、直属の上司との関係性です。特にマネージャー職の場合、上司との密な連携やサポート体制は、チームを率いて成果を出す上で不可欠と言えます。
この記事では、私が過去の転職で、入社後に直属の上司との間で深刻な認識のズレが生じ、信頼関係の構築に失敗した結果、マネージャーとして多大な苦労を強いられた体験をお話しします。この失敗談が、読者の皆様が同様の事態を避け、より良い上司との関係性を築くための反面教師となれば幸いです。
失敗の詳細
私が経験したのは、ある事業会社の管理部門におけるマネージャー職への転職でした。面接時、今後の事業戦略や私の役割については詳しく説明を受け、直属の上司となる部長とも複数回面談を行いました。部長からは、組織として新しい取り組みに挑戦していく姿勢、私のこれまでの経験への期待、そして「風通しの良いフラットな組織を目指したい」といった話を聞き、信頼でき、共に新しいものを創っていけるリーダーだと感じていました。
しかし、入社後すぐに現実とのギャップに直面しました。まず、部長との日常的なコミュニケーションが予想以上に少なく、私の業務内容や進捗、直面している課題に対する関心が薄いように感じられました。報告を上げても明確なフィードバックが得られず、重要な意思決定も私を経由せずに行われることがありました。
また、面接時に共有された「新しい取り組みへの挑戦」や「フラットな組織」といった方針と、実際の部長の言動や組織運営のスタイルには大きな乖離がありました。新しい提案をしても否定的な反応が返ってきたり、チームメンバーとのオープンな対話を促そうとしても部長が遮ったりすることが散見されました。結果として、チーム内で新しい試みを推進することが難しくなり、メンバーからの信頼を得る上でも支障が生じました。
最も苦労したのは、目標設定や評価に関する認識のズレです。私がチームとして目指すべき方向性や評価の基準について部長と擦り合わせようとしましたが、抽象的な指示や過去の慣例を持ち出すことが多く、具体的な合意形成ができませんでした。これにより、チームメンバーへの明確な目標提示や公正な評価を行うことが困難となり、マネージャーとしての機能不全に陥りました。部長との間に信頼関係を築くことができず、孤立感を深めていきました。
原因分析
なぜこのような失敗が起きてしまったのか、深く分析しました。
まず、自身の問題としては、面接段階で上司となる人物の「マネジメントスタイル」や「価値観」について、表面的な情報しか得られていなかったことが挙げられます。事業内容や役割に終始し、日々のコミュニケーションスタイル、意思決定のプロセス、部下への関わり方といった、一緒に働く上で非常に重要な側面について、具体的な質問や確認が不足していました。期待値を高く持ちすぎていた側面もあったかもしれません。
次に、企業側の問題として、特に上司である部長のマネジメントスキルやコミュニケーション能力に課題があった可能性が考えられます。多忙であったのかもしれませんが、部下である私やチームメンバーに対する適切な関与、フィードバック、期待値の共有が十分ではありませんでした。また、面接時に語られたビジョンと実際の行動に乖離があった点も、不信感を生む大きな要因となりました。組織全体の文化として、上意下達が強く、ボトムアップの意見を吸い上げる仕組みや、オープンなコミュニケーションを推奨する雰囲気が乏しかったことも影響していると感じます。
さらに、入社後のオンボーディングプロセスにおいて、私と部長の間で改めて役割や期待値を丁寧に擦り合わせる機会が十分に設けられなかったことも、認識のズレが解消されない一因となったと言えます。
そこから得られた教訓(反面教師としての学び)
この失敗経験から得られた最も重要な教訓は、「入社前に上司となる人物の『実態』を可能な限り見極めること」、そして「入社後早期に上司との間で『期待値の擦り合わせ』と『信頼関係構築の土台作り』に集中的に取り組むこと」の重要性です。
面接段階では、自身が期待する上司との関わり方(例:どの程度の頻度で報告・相談したいか、どのようなサポートを期待するかなど)を具体的にイメージし、それについて逆質問などを通じて確認すべきです。例えば、「御社のマネージャーと部長とのコミュニケーションはどのようなスタイルが多いですか?」「部長は部下育成においてどのような点を重視されていますか?」といった質問は有効でしょう。可能であれば、一緒に働くことになる他のメンバーや、部署外の人物から、上司に関する情報を得ることも検討すべきです(ただし、倫理的な配慮は必要です)。
入社後は、遠慮せず積極的に上司とコミュニケーションを取る機会を設けることが不可欠です。自身の役割や目標について、改めて上司の認識と合っているか丁寧に確認し、期待値のズレがないように務めます。また、自身の仕事の進め方や、チームとしての方針案などを積極的に提案・共有し、上司からのフィードバックを得ることで、相互理解を深める努力を継続する必要があります。単に指示を待つのではなく、こちらから働きかけ、報連相を徹底することで、信頼関係構築の土台を築く意識が重要です。
万が一、早い段階で「この上司とは合わないかもしれない」「期待していた関係性が築けない」と感じた場合でも、すぐに諦めるのではなく、コミュニケーションの方法を変えたり、他の関係者(人事、斜め上の上司、同僚など)に相談したりといった代替手段を模索することも、孤立を防ぎ状況を改善するために考えられるべき行動です。
結論/まとめ
上司との関係性は、新しい環境での成功に大きく影響します。私の失敗談は、この関係性を軽視したり、面接時の印象や期待値だけで判断したりすることの危険性を示しています。特にマネージャー層は、自身だけでなくチーム全体のパフォーマンスにも関わるため、上司との連携はより一層重要になります。
入社前にできる限りの情報収集を行い、入社後早期に意識的に上司とのコミュニケーションを重ね、期待値の擦り合わせや信頼関係構築に努めること。そして、うまくいかない場合でも多角的な視点で原因を分析し、代替策を模索すること。これらの学びは、皆様が今後の転職や現職でのキャリアにおいて、より良い上司との関係性を築き、充実した働き方を実現するための重要な示唆となるはずです。私の苦い経験が、皆様にとっての確かな教訓となれば幸いです。