私の転職ブラックヒストリー

マネージャーとして苦労した、不透明すぎる評価制度の現実

Tags: 評価制度, マネジメント, 組織文化, 入社後ギャップ, 失敗談

入社後に直面した、評価制度のブラックボックス化

転職活動を経て、私はある組織でマネージャー職に就きました。前職での経験を活かし、新しいチームの成長に貢献したいという強い意欲を持っていました。しかし、入社後間もなく、私は組織が抱える根本的な問題に直面することになります。それは、「評価制度の不透明性」でした。この問題は、私がマネージャーとして機能することを著しく困難にし、私の転職を失敗へと導く大きな要因となったのです。

具体的失敗談:評価基準なき目標設定とフィードバックの欠如

入社して数ヶ月後、私はチームメンバーとの目標設定面談に臨みました。前職では、会社の戦略に基づいた具体的な目標設定、それに対する達成度の明確な評価基準、定期的な中間レビュー、そして公正な最終評価とフィードバックが一連のプロセスとして確立されていました。そのため、新しい組織でも同様のプロセスを想定していました。

しかし、現実は大きく異なりました。目標設定面談は形式的なものに過ぎず、設定した目標に対する達成度の測定方法や評価基準が極めて曖昧だったのです。「頑張ります」「貢献します」といった抽象的な目標が散見され、それを具体的な行動や成果に落とし込むための仕組みがありませんでした。上層部からの指示も、「とにかく売上を上げろ」「もっと目立つ施策をやれ」といった精神論や感覚論が多く、具体的な数値目標や評価指標が示されることはほとんどありませんでした。

さらに深刻だったのは、評価期間中のフォローアップやフィードバックが皆無だったことです。中間レビューのような機会はなく、メンバーは自身のパフォーマンスがどのように評価されているのか、全く見当がつかない状況でした。私も、上層部からチーム全体の評価に関する具体的なフィードバックを受けることはなく、何をもって良しとされているのかが理解できませんでした。

このような状況下で、マネージャーとしてチームを適切に評価し、メンバーの成長を支援することは不可能でした。部下からは「何をどう頑張れば評価されるのか分からない」という不満が噴出し、チーム全体のモチベーションは低下しました。私自身も、部下に対して具体的な目標や評価基準を示すことができないことに強い無力感を感じていました。評価面談の時期になっても、どのような基準でメンバーを評価すれば良いのかが分からず、過去の慣習や上層部の意向を推し測りながら、苦渋の判断を下さざるを得ませんでした。これにより、一部の優秀なメンバーからの信頼を失う結果にもつながりました。

原因分析:属人的な評価と機能不全な人事制度

なぜこのような不透明な評価制度がまかり通っていたのか。深く分析する中で、いくつかの原因が明らかになりました。

まず、最も大きな要因は、評価が経営層や特定の役員の属人的な判断に強く依存していたことです。明確な評価基準やプロセスが存在せず、最終的な評価は彼らの主観やその時々の印象によって大きく左右されていました。これは、組織の規模が小さかった時代の名残かもしれませんが、組織が拡大するにつれて、マネジメント層や社員全体の不満の種となっていました。

次に、人事部の機能不全が挙げられます。人事部は評価制度の設計や運用に関与している様子がなく、実質的に機能していませんでした。組織の成長に合わせて制度をアップデートしたり、マネージャーへの研修を行ったりする役割を誰も担っていなかったのです。

また、組織文化も影響していました。変化を嫌い、過去の成功体験や慣習に固執する文化が根付いており、非効率的であっても従来のやり方を変えようという機運がありませんでした。不透明な評価も「そういうものだ」と受け入れられている節がありました。

そして、私自身の準備不足も否めません。転職活動中、企業のビジョンや事業内容、一緒に働く人については深く掘り下げて質問しましたが、評価制度の具体的な仕組みや運用実態については、表面的な説明を受けただけで深く確認しませんでした。「一般的な評価制度はあるのだろう」と過信していたのです。マネージャー職として入社するにも関わらず、自身や部下の評価に直結する最も重要な制度について、実態を把握しようとしなかったことが、この失敗の根源にありました。

得られた教訓:評価制度の実態を深く見極める重要性

この苦い経験から、私は転職活動において「評価制度」の実態を深く見極めることの重要性を痛感しました。特にマネージャー層であれば、自身だけでなくチームメンバーのキャリアにも大きな影響を与えるため、以下の点を徹底的に確認すべきだと学びました。

これらの情報は、企業の採用担当者や面接官に直接質問するだけでなく、可能であれば現場で働く社員(特にマネージャー層)にカジュアル面談などの機会を通じて尋ねてみることも有効です。また、入社前のリファレンスチェックを行う企業であれば、その機会に候補者の前職での評価に関する情報を得ることも重要ですが、逆に入社を検討している側から、その企業での評価やマネジメントに関する評判を慎重に収集する視点も必要だと感じています。

入社後に評価制度の問題に気づいても、それを個人や一マネージャーの力で変えることは極めて困難です。組織構造や文化に根差した問題である場合が多く、評価制度が機能していない組織では、公正な評価や適切なマネジメントを行うことができず、結果として自身のキャリアにも、そして部下のキャリアにも悪影響を及ぼす可能性があります。

結論:見えないブラックボックスは避けるべき

不透明な評価制度は、組織における信頼関係を損ない、メンバーのエンゲージメントを低下させ、最終的には事業の停滞を招きます。特にマネージャーとしてチームを率いる立場であれば、公正な評価を行うための「武器」がないに等しく、マネジメントの根幹が揺らぎます。

私の失敗経験は、「目に見えない組織の仕組み」、中でも評価制度のような重要な要素について、入社前に徹底的に確認しなかったことの代償でした。給与や役職といった表面的な条件だけでなく、企業の「評価文化」や「マネジメントの質」といった内部事情こそ、入社後の活躍や定着に大きく関わる要素です。

もし転職活動中に評価制度について明確な説明が得られなかったり、説明に納得がいかなかったりする場合は、立ち止まって慎重に検討すべきです。見えないブラックボックスを抱えた組織は、入社後に思わぬ苦労を強いられる可能性が高いことを、私の体験談が反面教師としてお伝えできれば幸いです。