私の転職ブラックヒストリー

入社後に判明した、権限なきマネージャー職の現実

Tags: 転職失敗, マネージャー, 名ばかり管理職, 組織構造, 入社後ギャップ, 権限, 企業文化

マネージャー職として入社したが、実態は「名ばかり」だった失敗談

期待を胸に新しい会社へマネージャー職として転職したものの、入社後に直面したのは、想像とはかけ離れた「権限なき」現実でした。肩書きだけはマネージャーでしたが、実質的な意思決定権はなく、組織構造上の壁にも阻まれ、何も変えられない無力感を味わうことになったのです。この経験は、私のキャリアにおいて大きな転換点となり、その後の転職活動や企業選びに大きな教訓を与えてくれました。今回は、この「名ばかり管理職」としての失敗経験を赤裸々に語り、読者の皆様が同様の落とし穴にはまらないための反面教師として、具体的な学びを共有したいと思います。

転職時の期待と入社後のギャップの詳細

前職で一定の成果を出し、マネジメント経験も積んでいた私は、新しい会社で提示された「〇〇部門マネージャー」というポジションに魅力を感じ、転職を決めました。面接では、部門の再編成、新しい戦略の実行、チームビルディングなど、裁量を持って取り組める範囲が広いように説明を受けていました。年収もアップし、まさにキャリアアップだと確信していました。

しかし、入社してみると現実は全く異なりました。

まず、組織構造が極めてトップダウンであり、重要な意思決定はすべて役員会または特定の力を持つ上級管理職によって行われる構造でした。私の部門に関する小さな予算執行一つをとっても、極めて煩雑な承認プロセスを経る必要があり、スピード感のある対応は不可能でした。新しい施策の提案なども、形式的な会議で報告するだけで、実質的な議論や承認には至らないことがほとんどでした。

次に、私の「マネージャー」としての権限範囲が曖昧でした。部下の評価や目標設定においても、最終的な決定権はさらに上のレイヤーにあり、私の意見は参考程度にしかならない状況でした。部下との面談で彼らのキャリアプランや希望を聞き、部署としてサポートしようとしても、権限がないために具体的なサポートが難しく、部下からの信頼を得るのに苦労しました。私は彼らの日々の業務管理や勤怠管理といったプレイングマネージャーの延長のような役割に終始し、真の意味での「チームを率いる」実感を得られずにいました。

さらに、他部署との連携も非常に困難でした。私の部門が何か新しい取り組みを始めようとしても、関連部署との調整が一向に進まない、情報共有が滞るといった問題が頻繁に発生しました。これも、私に部署を横断して物事を推進する権限や影響力が実質的に与えられていなかったことが大きな要因でした。

結果として、私は部門の課題を認識し、改善策も思い描いていましたが、それを実行に移すための「権限」と「組織的な後押し」が全くない状況に置かれました。肩書きはマネージャー、しかし実態は「連絡係」や「雑務処理班長」のような役割に成り下がってしまい、大きな無力感とフラストレーションを抱える日々が続きました。

なぜ「名ばかり管理職」に気づけなかったのか:原因分析

このような状況に陥ってしまった原因を、今振り返るといくつか挙げることができます。

一つ目は、自身の情報収集と質問の甘さです。面接時に、提示された「裁量」「責任範囲」といった言葉を額面通りに受け止めすぎていました。具体的な意思決定プロセス、予算権限の範囲、部下の評価における自身の権限、他部署との連携における役割などについて、より深く、具体的に掘り下げて質問すべきでした。「具体的にどのような課題解決を期待されていますか」「その課題解決のために、どのようなリソースや権限が私に与えられますか」「入社後、最初に改善すべきだと考えているプロセスは何ですか、それをどう進める想定ですか」といった質問をすることで、より具体的な業務イメージや組織の実態を掴めたかもしれません。

二つ目は、企業側の説明不足、あるいは意図的な説明のぼかしです。面接官は、ポジションの魅力や期待を伝えることに終始し、組織構造上の制約や、マネージャー職の具体的な権限範囲について、詳細な説明を避けていた可能性があります。良い面だけを強調し、入社後のギャップを生み出す要因を隠していたとすれば、それは企業側の誠実さに欠ける姿勢と言えます。

三つ目は、組織構造と文化の事前見極めの難しさです。外部から企業の「トップダウンの強さ」や「部署間の壁の高さ」、あるいは「特定の役員に権限が集中している」といった構造的な問題を見抜くことは容易ではありません。口コミサイトやOB/OG訪問なども活用しましたが、得られる情報には限界がありました。特に、マネージャー層向けのリアルな情報は、一般的な社員の視点とは異なるため、より深い情報源を探るべきでした。

この失敗から得られた教訓(反面教師としての学び)

この「名ばかり管理職」という失敗経験は、私に以下の重要な教訓を与えてくれました。これらは、特にマネージャー層が次の転職で失敗を避けるための「反面教師」となるはずです。

  1. 肩書きではなく「役割」と「権限」を徹底的に確認する: マネージャーという肩書きが与えられても、それが実質的な権限や裁量を伴うものとは限りません。入社前に、自身の役割が「何を」「どこまで」決定・実行できるのか、具体的な予算権限、人事評価における関与度、組織内での意思決定プロセスにおける位置づけなどを、具体的な事例を挙げて質問し、明確な回答を得ることが不可欠です。
  2. 組織構造と文化を多角的に探る: 企業口コミサイト、ニュース記事、IR情報、可能であれば複数の社員との会話を通じて、組織の意思決定スタイル(トップダウンかボトムアップか)、部署間の連携度合い、権限委譲の文化があるかなどを探る努力が必要です。面接の場では、組織図を見せてもらい、自身のポジションがその中でどのような位置づけにあり、誰と連携し、誰に報告するのかを具体的に確認することも有効です。
  3. 期待値の「すり合わせ」を入念に行う: 企業側がそのポジションに何を期待しているのか、そして自分自身がそのポジションで何を成し遂げたいのかを、面接の早い段階から具体的にすり合わせるべきです。期待される成果だけでなく、それを達成するための手段やプロセスについても話し合うことで、入社後のギャップを減らすことができます。「私の強みである〇〇を活かして、△△を改善したいと考えていますが、このポジションで実現可能でしょうか。そのためには、どのような権限やサポートが必要になりますか」といった具体的な質問を投げかけることが重要です。
  4. 入社後の早期リカバリーを試みる: もし入社後に「名ばかり」であることに気づいたら、早期に直属の上司と率直に話し合う機会を持つことが大切です。期待していた役割と現実のギャップを伝え、どのようにすれば自身の経験やスキルを活かせるのか、どのような権限があればより貢献できるのかを具体的に提案してみることも一つの手です。ただし、組織構造や文化はすぐには変わらない場合が多いため、見切りをつける勇気も必要になるかもしれません。

結論:失敗から学び、次への糧とする

私の「名ばかり管理職」としての失敗は、転職活動において表面的な情報や肩書きに惑わされず、その裏にある「実態」を見抜く重要性を痛感させてくれました。特にマネージャー層としての転職は、与えられる役割や権限が成果に直結するため、この点の見極めが非常に重要になります。

この経験から得た教訓は、次の転職先を選ぶ際には、より具体的に、より深く、組織の実態と自身の役割・権限について確認する姿勢につながりました。また、入社後も常に「期待されていること」と「実際にできること」の間にギャップがないか意識し、必要であれば積極的にコミュニケーションを取るよう心がけるようになりました。

過去の失敗は、決して無駄ではありません。そこから具体的な教訓を引き出し、次に活かすことができれば、それは必ず自身のキャリアをより良い方向へ導く糧となります。この記事が、同じような失敗を避けたいと願う読者の皆様にとって、少しでもお役に立てれば幸いです。